地域共創センターでは、地域への「知の提供」のために、教育・研究・支援の成果を活かした学術的・文化的講座や、地域の皆さまのための教養・スキルアップ講座など、多彩な講座を開講しています。

 今回の公開講座は、宗教教育研究センターとの連携講座として6月5日(木)~7月3日(木)18時30分~20時00分に、本学講義室において、田代 俊孝 学長による「悲しみからの仏教入門 ― 死を超えていった念仏者たち ― 」というテーマで毎週木曜日、全5回の講義を開催しています。
 この講座は、本学の『宗教教育研究センター』との連携による講座で、本学の学生に仁愛学園の建学の精神である聖徳太子の和の精神、親鸞聖人の教えに基づく人材の育成を推進するなか、地域の皆さまにも広く講座として開講したものです。

 一日目の講座では、まず、今から40年前、先生が名古屋で医療関係者たちと「死そして生を考える研究会(ビハーラ研究会)」を立ち上げ大学院で同じゼミだった田宮 仁氏とともにビハーラ運動を始めたされました。その頃、癌の病名告知や高齢化社会に向かってゆく中で、生や死の問題が社会問題になり始めていました。そんな中で癌患者からは「死んでゆく人をより良く送ることも医療の役目ではないか」という声がありました。
 当時、先生はその経緯と親鸞の死生観をテーマにNHK教育テレビの「心の時代」に出演されました。今回は、まず、そのビデオを見せていただきました。若き日の先生の熱心な語りと行動力に感動しました。そして、そのタイトルに引用された「未だ生を知らず、いずくんぞ死を知らんや」(論語)という言葉は、対偶命題の反語表現で「死を知ったら生の意味がわかる」との意であると解説されました。そして、「いのちを所有化し、自分のいのちは自分でどうにでもなると思っているが、誕生も死も思い(自我)の外から思いがけずやって来る。不如意、すなわち、思い通りにならないのです。人は思い通りにならないことを、自我で思い通りにしようとするから苦しむのです。思い通りにならないことを思い通りにならないと知っていくことがそれを超えていく道です」と話されました。
 また、最後に「身近な人の死を通していのちを学ぶため、死は遺された人に対して、死にゆく人の最後の贈り物です」といい、番組の中で紹介された平野恵子さんと言う人の手記を通していのちの学びを紹介されました。その方は、高山市の方で重症心身障がいの子をはじめ、三人の子どもを残して往生されました。そして、「私たちは、役に立つ立たないでその人の価値を決めてしまいますが、この事例を見てわかる通り、身体を動かせないこのお蔭で、平野恵子さんは生きる意味を教えてもらっているのです。役に立つ立たないという価値じゃないです。いのちの長短の物差し、つまりとらわれを離れて、あるがままを受け容れるところに仏教の救いがあるのです。癌のままで、死んでいく身のままで助かっていくのです」。と、まとめて終了されました。

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