仁愛大学 Jin-ai University

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2024年03月15日令和5年度学位記授与式 学長式辞

 水ぬるみ、万葉の里にも新芽が芽吹く今日、ここに福井県知事代理・副知事 鷲頭美央様、越前市市長 山田賢一様をはじめ多数のご来賓の方々のご臨席を賜り、令和5年度の仁愛大学ならびに仁愛大学大学院の学位授与式を挙行できますことは、たいへん大きな喜びであります。人間学部 心理学科100名、コミュニケーション学科 57名、人間生活学部 健康栄養学科 63名、子ども教育学科 66名 計286名に学士の学位を、また、人間学研究科 臨床心理学専攻 12名に修士の学位を認定致します。授与された皆さん、まことにおめでとうございます。そして、御列席の保護者の皆さんにも心からご祝意を申し上げます。併せて、ご子息・ご息女の在学中に本学へ寄せていただきましたご支援、ご協力に対しましても心より謝意を表します。
 さて、皆さん、在学中に培われた教養と専門的な学識や技能・体験をベースとして一人ひとりがさまざまな進路に向かって、それぞれの場で活躍されていくことに、私は大きな期待を寄せるものであります。それと同時に「仁愛兼済」という本学の建学の理念に基づく高度な教養としての人間的学びも、皆さんの人生に大きな意味をもつものと確信しております。
 今年の元日には、突然、能登半島地震が発生しました。連日その報道に接し、その災害の大きさに日本中が驚きと悲しみにくれました。そんな中、次第に復興に向かってボランティアの要請も来るようになりました。何人かの教員・学生はすでにボランティア活動に励んでおります。これまた、建学の精神の実践です。
 「仁愛兼済」とは、互いに「いのち」を尊び、共生社会の実現を目指して、世を照らす灯となって、それを実践することです。在学中、折に触れて学んでこられたと思います。これは、『仏説無量寿経』という仏教の経典に説かれる教えであり、哲学です。実学、つまり、実用的な学問が好まれる昨今、改めて、哲学・倫理・宗教の重要性を考えてみたいと思います。
 私事で恐縮ですが、私は、仏教学と生命倫理学という学問分野を研究しております。本学に赴任する前には、永年、名古屋の大学の医学部で生命倫理の授業を担当し、生命倫理審査委員や遺伝子やヒト・ゲノム、バイオの安全審査委員を務めていました。今も日本生命倫理学会の役員をしております。臓器移植、遺伝子治療、生殖補助医療、再生医療、代理出産・代理母、ヒトと動物の合成であるキメラ作成など医療の技術は日進月歩です。しかし、それをすぐさま実施していいかどうかは別問題です。自然の摂理を踏み外していいのかどうか、人間が「神の手」を持ってもいいのかどうか。人権が護られているかどうか、障害を持つ人に不安を与えていないか。医学の価値観だけでは限界です。その技術によって取り返しのつかないことが起きて人類は滅びるかもしれません。人間の尊厳が保たれなくなります。人間の傲慢さがそうさせてしまうのです。その技術を使うか使わないかやその妥当性を考える哲学や倫理・宗教が必要です。あらゆる分野において同じことが言えるのです。
 すでに、世はAI技術、つまり、人工知能に取って代わられる時代になりました。人が機械に使われる時代になりそうです。その意味でも、それ使うためには哲学や倫理・宗教がいよいよ重要となってくるのです。人間としての在り方を問い、自然や神に畏敬の念をもち、謙虚な態度が求められるのです。「仁愛精神」は、仏教哲学です。仏教に教祖はいません。有るのは「色も形もない普遍の法」のみです。仏陀も親鸞も先立ってそれを学んだ先人に過ぎません。彼らは法、つまりその哲学の目覚め方を私たちに教えてくれているのです。社会に巣立つ皆さんは、このことを心にとどめて、それぞれの人生を歩んでください。
 本学では学内に「ソウルメイキング・キャンパス仁愛」と題して建学の精神に基づいた標語を折々に掲示しています。皆さんの在学した四年間、ないしは二年間の「ソウルメイキング・キャンパス仁愛」の標語と、入学式、学位授与式の学長式辞のアンソロジーを、『あなたに贈る言葉24―うるわしい世を拓く灯となるために-』と題した小冊子にまとめました。今日、旅立つあなたへ記念に、それを贈らせていただきます。
 最後に、皆さまのさらなるご活躍と人生の深い営みを念じまして式辞といたします。

令和6年3月15日
仁愛大学 学長 田代俊孝

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