仁愛大学 Jin-ai University

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2023年03月17日令和4年度学位記授与式 学長式辞

 水ぬるみ、万葉の里にも新芽が芽吹く今日、ここに令和四年度の仁愛大学、ならびに仁愛大学大学院の学位授与式を挙行いたします。
 三年余のコロナ禍の中でそれに耐え、この度卒業される人間学部心理学科76名、コミュニケーション学科76名、人間生活学部健康栄養学科72名、子ども教育学科50名、計274名の学士の学位を授与された皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、人間学研究科 臨床心理学専攻 6名の修士の学位を授与された皆さん、修了おめでとうございます。そして、御列席の保護者の皆さんにも心からご祝意を申し上げます。併せて、ご子息・ご息女の在学中に本学へ寄せていただきましたご支援、ご協力に対しましても心より謝意を表します。
 さて、皆さんの進路はさまざまですが、在学中に培われた専門的な知識や技能、体験をベースとして一人ひとりが、それぞれの場で活躍されていくことに大きな期待を寄せるものであります。それと同時に「仁愛兼済」という本学の建学の理念に基づく高度な教養としての人間的学びも、皆さんの人生に大きな意味をもつものと確信しております。「仁愛兼済」とは、互いに「いのち」を尊び、共生社会の実現を目指して、世を照らす灯となって、それを実践することです。在学中、折に触れて学んでこられたと思います。これは、『仏説無量寿経』という仏教の経典に説かれる教えであり、哲学に基づくものです。昨今、「宗教」と言うと「カルト宗教」と同一視され、「危ない物」と見られることが多いようです。本来的普遍宗教は、例えば仏教の「解脱(げだつ)」という言葉が示すように、自分を縛って苦の原因となっている価値観を解き脱ぐ、つまり、心を開放するものです。そして、本来的自己を取り戻して、心を平安にさせるものです。仏教の教義は哲学です。それに対して、カルトとは、非科学的教義に基づくか、或いは、本来の宗教の教義を利用して、教団の利益追求を目的としています。そして、陥ると次のような集団的特徴を持ちます。
 1.過度な集団アイデンティティ、つまり、教祖に所属すること以外に自分の存在意味が持てなくなります。
 2.個人生活のはく奪。個人としての生活や社会、財産、労力などが奪われます。
 3.内外の批判封鎖、つまり、集団に対する批判を自分の中に持たないようにし、外からの批判も許さないようになります。
 4.絶対服従、つまり、教祖や教団に自身の判断や思考・行動をすべて委ねてしまい、一つの価値観に凝り固まってマインド・コントールさせられます。
マインドコントロールとは、特別な教義を植え付けられるというより、本来持っている自分の判断や思考・価値観が破戒され、今度は、教祖や教団の都合のいい思考・価値観に変えられ、その教祖や教団にすべてを委ねてしまう状態におかれることです。そして、以下のような傾向があります。
 1.強いカリスマ支配。2.終末論或いは亡国論を説く。3.罸を説き、恐怖心を定着させる。 注(1)
 このように、表面上は宗教的行為に見えながら、実は信者になった人の人権侵害であり、公共の秩序を著しく破壊してしまうものです。本来的宗教とは全く逆の状態をもたらすものです。ひとたび、それに固まってしまうと「解凍」、つまり解き放たれるのが大変困難になります。「宗教とは何か」を知らないと、かえって、勧誘されて誤って陥ると考えられます。皆さんは、本学での学びで宗教が何たるかを学んだと思います。決してカルトに陥らないようにしてください。

 「仁愛精神」は、仏教哲学に基づいています。仏教に教祖はいません。有るのは「色も形もない普遍の法」のみです。仏陀も親鸞も先立ってそれを学んだ先人に過ぎません。彼らは法の目覚め方、法による「解脱(げだつ)」を教えているだけです。社会に巣立つ皆さんは、この願いを心にとどめて、それぞれの人生を歩んでください。

 学内に「ソウルメイキング・キャンパス仁愛」と題して、建学の精神に基づいた標語を折々に掲示してきました。皆さんの四年間、ないしは二年間の在籍中の「ソウルメイキング・キャンパス仁愛」の標語と、入学式、学位授与式の学長式辞のアンソロジーを、『あなたに贈る言葉23―うるわしい世を拓く灯となるために-』と題した小冊子にまとめました。今日、旅立つあなたへ記念に、それを贈らせていただきます。最後に、皆さまのさらなるご活躍と人生の深い営みを念じまして式辞といたします。


  令和五年三月十七日
             仁愛大学学長 田代俊孝

注(1):真宗大谷派青少幼年センター発行「カルト問題学習の手引き」参照。

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