仁愛大学 Jin-ai University

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2022年04月04日令和4年度 入学式 学長式辞

IMG_8030_2.jpg 長かった冬も過ぎ、ここ万葉の里にも春が訪れ、桜は満開です。しかし、新型コロナウイルス感染症で、平穏な生活が奪われ、世界中の人々が対応に追われています。やがて、この事態も収束して、必ず元通りの生活を取り戻せることを信じて、最善を尽くしたいと思います。その中で、本日、入学式を迎えました。この会場には、新入生のみで、保護者の皆さんは、別室での御参席というのも、感染拡大を防ぐための苦渋の方途です。まず、そのことにご理解をいただきたく存じます。人間学部 心理学科 90名、コミュニケーション学科 69名、3年次編入生 1名、人間生活学部 健康栄養学科 63名、子ども教育学科 55名、3年次編入生3名、人間学研究科 臨床心理学専攻 13名、新たに仁愛大学の学生となられた皆さん、ご入学おめでとうございます。また、本日、別室で御参席の保護者の方々にもこの場より心からお慶び申し上げます。併せて、今後の本学の教育・研究・地域連携などにつきまして一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 新学期の授業も、概ね対面の授業を行いますが、一部の多人数の授業は感染防止のため、リモートの授業形態をとらざるを得ません。ご理解を賜りますようお願いいたします。
 さて、本学は「仁愛」という大学名が示す通り、『仏説無量寿経』の「慈恵(じえ)博く施し、仁愛兼ねて済う」ということを建学の精神にしております。平易に言えば、「互いに〈いのち〉を尊び、共生社会の実現を目指し(仁愛)、世を照らす灯となって、それを実践する(兼済)。」ということです。そして、そのことを教育の根本にしております。
 改めて「仁愛」という言葉の意味を考えてみたいと思います。それは、単なる「愛」つまり、loveと言う意味だけではありません。「慈愛」あるいは「敬愛」つまり、慈しむ、尊敬する(respect)、思いやる、という意味が含まれています。今、ウクライナでは多くの人が、戦火で苦しんでいます。テレビやウエーブサイトで、銃弾を避け、逃げ惑う多くの子どもたちの姿を見るといたたまれません。母との逃避行で、その母が銃弾の犠牲となって、ひとりで泣きながら歩く少年。母と子供三人で、防空壕へ避難するとき目の前で二人の子を失った母親の悲痛な叫び。それを見ていて、じっとしておれません。でも、何ができるのだろうか。何もできない自分に歯がゆさを感じているのは、私だけでなく、皆さんも同じだと思います。せめてもと思い、本学でもウクライナ救援募金を始めました。思いやりとは、思いをやること、共感、共有することです。思いは見えませんが、思いやりは見えます。心は見えませんが心配りは見えます。
 慈しむとは、美(うつく)しむ、つまり麗しくすること、清らかで心豊かになることです。
 私は、第二次世界大戦後の生まれですが、幼いころ、その終戦直後に、中国大陸から引き揚げた人たちの体験談を聞いて、あまりの悲惨さに身が凍り付いたことがあります。今、その苦難を受けた人たちと重なり、ウクライナの情景が増幅されます。そこで、言えることは、
 本当のやさしさは、悲しみの中から生まれる。
 本当の喜びは、悲しみを経験しないと味わえない。
 私たちは、ウクライナの人たちの悲しみを経験することはできません。しかし、共感、共有することはできます。「思いやり」、つまり、思いをウクライナに馳せ、悲しみを共感、共有しましょう。そこに、本当のやさしさを、つまり、仁愛精神を持つことができるのでしょう。それが「共生」と言うことです。
 仏教の経典には、「共生」を教えるこんな説話もあります。「共(ぐ)命(みょう)鳥(ちょう)」と言って、一つの胴体に頭が二つある鳥が経典に出てきます。この鳥は、ヨーロッパへも伝わって「双頭の鷲」となり、各地の王家の紋章になっています。
 あるとき、片方の頭が、もう一方の頭が憎いので、もう一方の頭を、騙して毒の木の実を食べさせました。そうしたら、自分も死んでしまったというお話です。同じ地球に住んでいる我々は「共なるいのち」を「共に生きている」のです。他者の死は自分の死です。
 本学では、1年次に「仏教の人間観」という全学共通科目を学んでいただきます。建学の精神を具体的に学ぶ授業です。どんな職業に就こうとも、必要とされる高度な教養です。この出遇いが皆さんの人生を心豊かにしてくれるでしょう。
 皆さんが、それぞれの分野の高度な専門的知識とスキルを修得するとともに、心の通った人間性を培う「ソウルメイキングキャンパス」、それが本学です。正門に「美(うるわ)しい世を拓(ひら)く灯となるために」と書かれています。「美しい世」とは、そのような「心の通った豊かな世」という意味です。
 最後になりますが、本学におきましては、教育・研究はもちろん、「地域共創センター」を中心に、全学的に地域連携を推進する体制を取っております。多文化共生、駅前サテライトなど、これまでの先輩諸君の活動は、インターネットや新聞、テレビなどのメディアをとおして広く伝えられております。これらの活動をとおして、多様な人間関係を学び、また企画力、マネージメント能力を養うことができます。これらの成果によって本学の就職率は、近年、全国の大学でトップレベルです。管理栄養士の合格率は今年も全国トップクラスでした。
 本学は地元地域との関係が密接な大学です。特に越前市とは、多文化共生事業などを行っております。今後、地域のご支援をいただき、連携事業をさらに進めてまいります。
 越前市、福井県のご協力に感謝するとともに、諸君が本学で充実したキャンパスライフを送り、立派に成長されますことと、一層ご活躍されますことを念じまして式辞といたします。


令和4年4月4日
仁愛大学 学長 田代俊孝

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