心理学部心理学科
近年の困難な社会状況の中、多くの人たちが心に悩みや苦しみを抱えて暮らしています。
必要な人に社会や周囲の助けが届かない要因を、心理学の観点から調べた卒業研究とは?
人が自殺に至る要因のひとつに、周りに援助を求めないケースがあることに着目。援助を求める際の心理的な抑制要因について研究を行いました。今回は、自分の感情や内面など他者から見えない部分に意識を向ける「私的自己意識」が高い人は、被援助志向性が低くなる(周りに援助を求めない傾向)、という仮説を立てて調べました。
Microsoft Formsというアンケート作成ツールを活用し、QRコードを読み取ってスマホで回答するという調査を実施。教室や食堂で学生にQRコードの入った用紙を配布しました。調査には、1.「賞賛獲得欲求・拒否回避欲求(肯定的な評価を得たい・否定的な評価を回避したい)」2.「私的自己意識」3.「自己隠蔽」4.「被援助志向性」の4つの尺度を採用。それぞれの相関性を調べることにしました。
調査結果について各尺度の相関関係を分析。SPSSというデータ分析ツールを使って行いました。先行研究と同じ質問をしていても対象者や属性によって結果が変わってくることがわかったり、他の質問とは測定の向きが逆になってしまう“逆転項目”をどのように設けるか、といった課題も出てきましたが、友だちと相談したり教えあいながら乗りきることができました。
自分の感情や内面に意識を向ける傾向が強い(私的自己意識が高い)人は、周りに援助を求めない傾向(被援助志向性が低い)という仮説に反して、両者に関係性は認められませんでした。ただ、私的自己意識にはネガティブな面(反すう)とポジティブな面(省察)があり、その混在が影響したとも考えられます。一方で、自己隠蔽と被援助志向性の間には負の相関が見られ、自己隠蔽は抑制要因といえることがわかりました。さらに調査方法を精査し、今後の研究につなげていきたいです。